この蝶を初めて見たのは、西表島のカンピレーの滝近くの平坦な岩場だった。湿った岩場には、アオスジアゲハやミカドアゲハが吸水に訪れていたが、少しでも接近しようと試みると、たちまち飛び去ってしまう。とくにミカドアゲハの敏感さには、お手上げだ。
さて、イシガケチョウの話に戻るが、この岩場にひらひらと舞い、岩面にベッタリと翅を広げて止まる。この蝶の名前の由来である石崖蝶は、こんな場所に多くいるからだろうか。確かに、岩面のこの蝶は、天敵の目を欺く効果がありそうだ。目で見た印象では、翅は想像してたよりも薄いようだ。タテハの力強さは、この蝶にはなく、どちらかというと優雅にヒラヒラと舞うと言った方がふさわしい。
イシガケチョウは、センダングサの白い花にも、よく訪れる。2頭の絡まる姿を狙ったが、これ以上の進展は望めなかった。八重山のどの島でも、よく見かけるポピュラーな蝶のひとつだろう。