高原の天気は、変わりやすい。夏雲の間から青空も覗かせ、アサギマダラやミドリヒョウモンがせわしくヨツバヒヨドリの花を訪れている。しばらくすると、夏雲は空を一面に覆い隠し、涼しい風が林道を吹き抜ける。いつの間にか、あれだけ飛び回っていた蝶たちも姿を見せなくなってしまった。雨粒がポツリポツリと落ち始め、傘を出して開いたと同時に、にわか雨が地面をたたきつける。
ベニヒカゲは、いないかと探していると、黒っぽい蝶が林道をゆらゆらと飛んでいた。少し飛んだかと思うと、すぐに地面に止まる。すぐ近くにイケマの群落があり、この植物の葉に止まってくれたら思い通りの絵になるのにと勝手に思っていたところ、まさに願ったり叶ったりのシーンをつくり出してくれた。オレンジ色の模様が、いかにも高原の蝶という雰囲気を漂わせ、イケマの白い花とのコラボレーションも素敵だった。