もう25年くらい前の話になるが、蝶のポケット図鑑のアオタテハモドキの解説文を読んで憧れたことを、今でも鮮明に思い出す。「驚いたことに私の周りはアオタテハモドキでいっぱいだった。青く輝く翅を開いては閉じ、思い出したように飛びたっているのを見て、歓声をあげながら走り廻り、息をこらしてシャッターを切った・・・」もうすでに、この頃から八重山の美しい蝶たちを夢見ていたのだろう。
見果てぬ夢と思っていたことが、今、石垣島の北部の草原で起こっていた。青い海に沿って続く、草原の小径には、アオタテハモドキが、解説文と同じシーンを展開していた。歓声はあげなかったが、同じように走り回ってシャッターを切ろうとすると、察したように飛び去ってしまう。それでも、そんな時間が私にとって、かけがえのない幸せの時間なんだろう。(2013年5月27日・石垣島)